地震の被害にあったときの知恵(熊本地震被災の方へ。)

熊本ならびに、九州地方の方々 ご不安な日々をお過ごしかと思います。
遠方なことや、地域を知らぬものが被災地に入ると多くの問題が起こりますので
遠方からですが 少し、お役に立てばと思います。
(現地を知らない事や、個々の環境により違うので参考程度で申し訳ありません。)

私は、阪神淡路大震災の経験者です。
震源地のま北 海を渡ったところに位置する地域にいました。
職場は、神戸のど真ん中。多くの焼け跡や被害をみました。
そんな経験から、生活に必要な事をまとめて書きたいと思います。

〇 安全な場所の確保

 ・避難指示が出ている場合は速やかに 身分証明、重要書類(印鑑や通帳、権利証等)と
   最小限の衣類(特に防寒、頭を守るもの(分厚い帽子など)、靴はしっかりとした底のもの。
    ( あればゴム長やトレッキングなどは重宝します。)、手袋、大き目のビニール袋、
     ティッシュペーパーを荷物にまとめて、缶詰、飲料水などがあれば無理しない程度確保。

  ブレーカーやガスの元栓を必ず確認してから家を離れる。
 (避難場所への道中、水のある箇所は入らない。状態によりますが感電のおそれもあります。
  道が崩落(特に道の端)する場合があるので 亀裂のある場所などはできるだけ避けてください。)

 ・阪神淡路大震災から 耐震設計の建物が増えています。
  耐震設計のされたできるだけ新しい建物がベストですが、余震がある場合は頭上の高いところに
    天井があるところはできるだけ避けること。(高いところから落ちるものほど威力があります。)

 ・崖や斜面がある、川や海の水のある傍はさけて 地盤のしっかりした地域へ移動する。
      (もともと、田んぼの上にできた建物などは、土砂崩れ、液状化などしやすいかとおもいます。
        道の端や、建物の角をしっかりとみて陥没や水平のずれなどに注意してください。)

 ・現在、すでに雨がふってしまったようですが 一軒家を持ちの方は
     晴れている日の日のあるうちに余震に注意しながら建物の被害の確認を。
     亀裂や、雨どい、かわらのずれを確認しておく事で 対処の仕方がわかります。
    また、家の中の柱を一通りたたき 音が軽いものなどは注意。(くれぐれもご安全に)
    うちでは、雨どいが外れて雨がもれて大変でした。
    雨が降るまでに確認しておいたらよかったと後悔しました。

 ・ガスくさいなと思ったら、どこかでガス漏れが。きな臭いなと感じたら近くで火災の可能性があります。
     嗅覚は、人間の体で 無意識にもっとも早く反応する箇所でもあります。
    特に、ガス漏れの場合は、その場を離れる事。
    自分が火を使わなくても他人がうっかり火をつかったり、漏電で火災や爆発が起こる事もあります。
 

〇 ライフラインの確保

 ・水を確保するには、ビニール袋(2重がいい)を何か堅い箱の中にいれセットにしておくと
      運びやすくなります。ただし、欲張って大きくするとしんどい事や水も悪くなるので
     自分が持ち運びして疲れない量にしましょう。(復旧してくれば配車も増えてきます。)
     塩素がとんでしまうと悪くなるので、密閉容器に移すか 袋の口を縛る事。

  同じ町内などは断水していても、一区画はなれると水がでていたり
      ガスが生きている事も多くあります。
      お知り合いと連絡をとり確保できるものはいただくのがいいかと思います。
      (神戸でも南のほうはダメでしたが、山向こうや別の区はお風呂に入れたりしていました。)

 ・同じ方法でトイレを作ることが可能です。(袋は重ねたほうがいいです。)
 段ボール箱の中に縦に丸めた柱をいれ強化し、真ん中に穴をあけ(周りも重ねて強化)
 下に、上の箱よりも小さめのビニール袋をかぶせた箱をセットすれば 簡易トイレができます。
    できれば、塩素系漂白剤を薄めたものをスプレーにし(かなり薄くていいとおもいます)
    
用を足した跡でスプレーしておくと、衛生面で少しはましだと思われます。
 おがくずや、土、石灰などが手に入るようであれば上にかけていくといいかと思います。 

   いっぱいになった場合、一時的ですが袋の口をしばり 穴を掘ってうめておいたり、
   冷暗所をつくり(ダンボールを重ねて熱を遮蔽)腐敗を抑えておくと 復旧したときに処分しやすくなります。
   トイレは、衛生問題としても健康としても非常に大切なので確保してください。
   水が出ない場合は、お風呂の汲み置きを大便の時だけ流すなどして対応。
   (紙は流さない。汲み置きが残っていたうちはこれでしのげました。)
   ビニールも何もない山の中では、就寝場所からはなれた風下に
  穴を深く掘ってトイレをつくるといいと思います。(水辺や木や建物の傍は避ける)

 注意点として、ガソリンスタンドは重要拠点ですが 耐震・防火設計だけです。
    ガソリンスタンドのトイレも 近隣が断水であればながれませんので使用しないこと。
   (当時、スタンドに勤めていたので 後の大便処理にひどく困りました。)
   同じく、上に給水タンクなどがない小さなビルの場合は、断水している場合
   おそらくトイレは流れません。不衛生なので特に大便には使わないで下さい。

 ・停電の場合、食べ物は、冷蔵が必要なものから先に食べる。(クーラーがある場合は早めに移す。)
     レトルトや、缶詰、カップラーメンは非常のときにとっておく。(水も火もなくても食べられます。)
   野菜などは、できればぬらして新聞などに包みビニールを軽くかけて(口は閉じない)熱をさけて保存。
   キャベツの場合、一番表のぶあつい皮をのこし 必要ぶん剥いた後 外皮につつんでおくと
   結構もちます。根野菜(特にじゃがいも毒がでるので)は、光にあてない。遮光、断熱して保存。

   干せる野菜は、処理した後 干しておくのもいいと思います。(長期孤立の考えられる地域。)
   断水の場合、食器はいらない紙などでふき取りお酒があれば湿してふき取るなどすると
   よいかもしれません。糖分の添加のないものは、手のふき取りなどにも使用できるかと思います。
   若干、消毒には度数が低いかと思われますが(通常の消毒用は度数70以上80程度です。)
   食品の防腐もできますので ないよりはましでしょう。

 ・緊急災害対応の自販機は 飲料の自動配給がされていると思います。
    できれば甘いものはさけるべきですが 水やお茶は我先にとられてしまうので
    甘いものなどを水で割るなどして飲むとカロリー確保と体調悪化を防げます。
    ただし、がぶ飲みやジュースなどでカロリーの確保は考えない事。
    特に、糖尿病の方などの場合 ブドウ糖液糖や砂糖入り飲料などは血糖値を上げてしまうので
    逆に人口甘味料などの飲料をできるだけ薄めたほうがいいかなと個人的には思います。
 
 ・ 阪神淡路のときは、コンビになどへの押し入りや強盗などがあり無法地帯でした。
      ですが、それ以降は 各企業の無償提供などもシステム化されていると思います。
      欲張って、押し入りや強盗などと取り合って 余分な怪我をしたりする事のないように。
     不謹慎に思えるかもしれませんが 必要になっているのは野外活動の知識です。
     何もない状態でキャンプをするとしたら自分はどうするか。
 そう思う事で 落ち着きを取り戻す事ができ、自分のやるべき事がわかります。

 ・簡易コンロなどがなく 火をおこさなければいけないときは
     まず、大きな缶など火を抑えられるもの探し 穴をあけてストーブを作る。(火事を避けるため)
     周りに燃えるものが多い場所や、屋内では絶対に使わない事。

 ・火を起こすコツは、燃えやすい乾いていてく細かい火種になるものから順に大きいものにうつすこと。
     やわらかく空気を含んでいるものほど燃えやすく、堅く絞った空気の少なく重いものほど火付きが悪い。
     逆に、夜中 火持ちをさせる必要がある場合は堅くて重い木材を使用する。
     (ぬれている場合は、火の周りに干しておく。乾燥したものは 細かくしておく。)
     燃やすものは、人工物は有毒ガスなどがでる可能性が高いので避けること。
    お線香などでも空気を起こる事により紙に火をつけたりできるのであせらない事。

〇 生活での必要な事

 1、保温・防寒

  ・眠るとき、地面に体温と取られるほうが多いです。
        背中が寒かったり、堅かったりすると眠れず体調悪化になります。
        ビニールを引いた上に ダンボールや紙類を満遍なく敷き詰め
       その上に寝具をおく事で熱の放散を防げます。
      (屋内では、ダンボールなどを引いた上にビニール、寝具のほうがいいです。)
        毛布は、背中に引くと暖かいです。ない場合は、きていない衣服を引くといいです。
        体育館や地面は、床が思ったよりも冷えるので、遮熱は必須です。
       衣類は、4枚以上重ねると 逆に熱が逃げるといわれています。
       体に密着するものを1枚(重ねると血液還流が悪くなります。) 
      その上に、保温できる軽めのものを1枚。次に 空気を含んだものを1枚。
      最後に空気を含んで膨らむ素材を一枚にするといいかと思います。(ジャンパーなど)
      衣服がない場合、断熱をかねて新聞紙などを中に巻き込むと暖かいと昔から言われています。

 ・不安でしょうが、靴は脱いで身近において眠るほうが血流が途絶えずにいいでしょう。

 ・先のことは考えない。日本中が被災したわけではありませんので必ずどうにかなります。
     先を考えるよりも、今 何もない状態で病気にならないで元気に過ごせる事を考える。
     これが一番大事です。
     今をきちんと頭を使って、いい状態にできるように生きてください。

 ・もし、自分が元気で余裕があるときは できるだけ人に声をかけてあげてください。
      お互いの健康の為にもなるし、目撃者がいることは、もしものときの安否確認にも役立ちます。
      「こんにちは」、「こんばんは」、「大丈夫?」 なんでもいいです。
      人は、人とつながることで自己確認を行う動物です。
     たった一言かけてもらって、それに返答する自分を知るだけで 元気になります。
    もし、避難所でぽつんといるお年寄りや、お子さんがいたら 挨拶してあげてください。
    お子さんがいたら是非、遊んであげてください。
    不謹慎なのではなく、それが 今できる事なのではないかなと思います。

 ・身近な人やペットがいれば 是非、手を繋いだりハグをしたりしてください。
     生き物は生体電気や暖かさを感じて お互いが生きている事を確認して安心します。
    特に、地震は 地面が揺れるので何が起こるかわかりません。
    お互いの確認と、心のつながりをしっかり持っておく為に機会があれば触れたり
    できるだけコミュニケーションをとってください。

 ・被災も長くなると 順番を守らない人や偉そうにする人など ルールを守らない人がいて
     腹が立つこともたくさんあると思います。そんな時は、こう考えてみてください。

 「ああ、この人は人生経験があまりないのだな。対応能力が少ないのなら譲ってあげよう。」

    その人は、必死に自己主張しなければ 今を過ごす事ができません。
    あなたに余裕がなかったとしても、そこで譲る勇気を持つ事は 今後のあなたを育てます。
   今の経験を今後に生かす事ができるのは、そういうふうにできる人です。
   腹をたててもかまいません。ムカついてもちろんです。それでいいんです。
   でも、そのムカつきを「ああ、ムカついているんだな。人間だもんね。」と思って自分を許してください。
  そうすれば、ストレスが少なく 被災地生活・避難生活を送る足しになると思います。

2、動けない人や重いもの動かすとき

 ・毛布などをつかって上に対象を置き 毛布をひっぱって動かします。
     下がでこぼこしていたり 滑りにくい場合は、ダンボールやブルーシートを引いて
      すべりやすいようにします。

 ・声をかけて探すのも一つですが 崩れない程度にがれきを軽く叩いたりなど
      音によって確認するのも一つです。
     深いところにいると 光や声がとどかないところもありますが振動音は通じる事があります。
    相手も近くのものを叩いて教えてくれる事もあるかと思います。
    懐中電灯などで照らす事によって人が来たことに気がつくこともあるかと思います。

 ・重いものを動かすときは、てこの原理を活用しましょう。(作業が続くのでできるだけ楽なように。)
     その場合、しっかりと自分の安全対策と崩落を防ぐ対策等を講じて 要救助者の安全も確保。
    近くに自衛隊やレスキュー隊などがいる場合は、できるだけ専門家の対応をお勧めします。
    もし、自力でどうしようもなく 時間がかかる場合は、飲料水などを差し入れ
    寒くないか確認、余震で崩落しないように体の近くに支えになるようなものを手配しましょう。

 ・ご近所の方と声を掛け合って お互いを確認しておきましょう。

 ・車より、バイクや自転車のほうが活動には便利です。
   今回は、直下型という話はききませんのであくまでも可能性ですが
     ただ、阪神淡路のときは、マンホールが大きく道の途中で突き出したりと非常に危険でした。
    段差も多くあり 車へのダメージが大きかったです。
     この為、車高の低い車はできるだけ移動には使わず バイクの際は転倒などを考えて
    必ず、手袋、きちんとした靴、クッション性のあるジャンパーなどで乗車してください。

〇 体調管理
     余震が多く続くと 精神的な疲労も大きくなります。
    もちろん、肉体的になれない事をしている、環境が悪い、食事もままならないと
    体調は悪化する事が多い環境です。そんな中でできる体調管理です。
    (これが本業ですので 一応・・・。)

 ・体をさする(擦る)
     一人でもお互いでもかまいません。体を力を入れないで手でゆっくりなでさすってください。
    体がだるいな、元気を出したいな、手足が冷たいな、手が干からびているななど思ったら
    体の中心から手足の先に向かって そっとやさしく置いた手を体を労わる気持ちを込めて
   「頑張ってるね。有難う。」となでてあげてください。これだけで 体もあなたと一緒に頑張れます。

 誰かにしてあげる場合は、落ち込んでいたり背中を丸めている人の場合、背中をさすってあげます。
   肩を落としている人の場合は首の付け根から肩、手先に向けてやさしく。
   状態や環境によりますが あなたがご自分にするように 「頑張ってるね。大丈夫。何とかなるよ。」と
   いってあげながら触れてあげるといいと思います。

 背中が丸苦なってしまっている人は、背中から。同じく首の付け根から腰のほうにかけて
   相手が踏ん張らないぐらいの力で しっかりと手を密着させながら 力をぬいてなでおろしてください。
   同じように、励ましや話を聞いてあげながらされるといいでしょう。

 背中などを擦った後、横に回り 腕や手を同じように擦ってあげます。
   落ち着いて 優しい気持ちでいたわりを込めて。「お互い元気でここにいるよね。一緒に頑張ろうね。」
   という思いを込めて     自分の事も確認しながらおだやかな気持ちになれるようにやりましょう。
   少しの間だけでも おだやかに過ごせる時間を持つ事は、被災した時は特に大切です。
  体にも、おだやかな時間を少しだけ与えてあげましょう。

 足がむくんだりしている人の場合は、足の先から体のほうにかけて擦ってあげます。
    このときに、無理にむくみをとろうなど思わない事。
   とにかく、優しい気持ちで 「元気にな~れ」というぐらいで十分 体は反応します。
      足がむくんでいる人の場合、高齢者などは基礎疾患をお持ちの方がいる場合もあるので
     病気がないかなどを聞いて もし、必要なお薬をのんでいないとか具合が悪いようなら
     看護師や医師をさがすお手伝いをしてあげてください。
     高齢者の場合、大きな声を出したり自己主張をするよりも その場にいることで精一杯で
    きちんとものを貰えてなかったり 飲み食いできていない場合もあります。
     糖尿病や、心臓疾患、腎臓疾患の場合は、食べるものにも気をつかう必要がありますので
     もち、元気のない方を見かけたら(特に高齢者) 声を掛けてあげてください。
     その上で、なでてあげるのであれば その方のしんどくない体制がベストです。
     もし、うつ伏せがしんどくないのであれば むくみの場合うつ伏せのほうがやりやすいですが
      くれぐれも無理に体に戻そうとしないようにしてください。
      やさしい気持ちを伝える。これで 体には十分に栄養です。

 軽擦は お子さんや、高齢者の場合は特に有効です。
 体を安らかに落ち着かせる事ができます。

   作業前には、少し早めに手短に行う事で 気力をアップします。
    避難生活での夜鳴きや体調悪化、食欲不振に役立ちます。
    体の循環をサポートしますので 運動不足になりがちな避難所生活や、
    救助、捜索などの普段しない活動で緊張しているお体にも十分に対応できると思います。

   とりあえず、思いつく事をいくつか書きました。
 正直、各状況でできる事 探せるもの、作れる工具、使えるものなどは
   いくらでも考えられるし 自分がそこにいればどうにでもすると思います。
 ですが、災害はいつでも 「そこにいる人が主人公」です。
    また、そうでないと 現場の人間は何もできません。

 各々が、今自分ができる事をすれば それが一番ベストです。
    「今は何も考えないで 自分のできる事をする。」
    「今、あなたは そこで生きている。」
    それを、しっかりとブラさずに 心に持っておいてください。

 施術所の近隣にある 日本レスキュー協会も駆けつけて活動をしているようです。
   私は、現地へはいけませんが はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師として
   現地で体調管理を望まれる方のサポートができるましたら幸いです。

               はり・きゅう・マッサージ おだやか堂トンボ庵代表
                                                                                                             S.T